2008年03月31日

閃光少女



代官山から、恵比寿まで。
夕闇の中歩く。

彼女は、長い、毛先だけゆるくカールした髪を揺らして、
折りたたみの小さな自転車を押して歩いた。
時々、私たちのすぐ横をヘッドライトが近づいては追い抜いていく。

そのたびに、彼女の小さな顔の輪郭がぐっと映える。
長いまつげや、小さなつぐんだ唇。丸いおでこ。
こういう、お人形さんみたいな女の子がまれにいるものだ。

何かはわからないまま、何かを探しに東京に来て、
やめようとは思いながら、淡々と、夜の仕事をして、
不規則になるのはいやだから午前中にはちゃんと起きて、
日曜日には、朝から彼に会う。
東京には、なんとなくな日常だけが、ある。

時々、このままじゃだめだと思う。
でも、どう変えればいいのかは、わからない。
そしてそうやって考えるのにも飽きちゃって、
また、なんとなくな日常が、ある。

楽チン。だけど、時々不安。

そういうかんじの、女の子。

私は、彼女のお人形さんみたいな顔とか、
細くて長い手足なんかを見るのが好き。
話も、過剰にキリキリしたところがなくて、好きだ。
気分や性格の触れ幅が同じくらいだからかもしれない。

私たちは、私の婚約の話をした。
つい最近、同僚に「それ、結婚詐欺みたい」といわれたほど、
私は彼との結婚を保留している。
母親が「どうしても結婚しなくちゃいけないときにしたらいい」
と言ったのもあって、
それもそうかもしれないと思ってしまったせいもあるだろう。

私は、自分のことを話すことが気恥ずかしくなってきて、
「あなたは?彼と結婚の話とかしないの?」ときいた。

彼女は、特に困った様子も無く、淡々と
「しないというかできないの。彼、結婚してる人だから。」と言った。

私もまた、淡々と「そうなんだ。」と言った。それから、
「日曜日に会えるって、いいな。なんか。」
私は、自分がものすごく変なことを言っていることに気がついて、
一瞬はごまかそうかとも思ったが、やっぱり、
自分の秘密も言うことにした。

彼女と秘密をシェアするのは、
なんだか気持ちがよさそうに思えたのだ。

「私もさ、結婚してる人と毎週食事したり、してるの。」

彼女はぎょっとして、それこそ、一歩のけぞってまで、驚いた。
そして、「かなり意外。」と言った。

「本気か遊びか、どっちなんだろう。。。気になるね。」と
彼女は言ったが、
どちらかというとその疑問は、彼女の彼に対して問いたい。

私はどちらかというと、あの人には、曖昧なままでいてほしい。
本心も結論もいわないでほしい。

そういうことが気になる限り、彼女には、
未来を一緒に考えられる人と付き合って欲しいと、
身勝手にも思ってしまう。

恵比寿駅前の雑踏で、彼女は手を振る。
少女漫画の女の子みたいな、大きな目でこちらをみている。
しっかりした笑みを浮かべた口元には、小さな歯が並んでいる。

自分がもし男だったら、
こういう時に恋に落ちるんだと思った。

きっと、なんとかしてあげたいと、
おせっかいにも思ったりしちゃうんだ。



東京事変


閃光少女
by youtube.com


この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。