2006年07月10日

水の女



早朝から大雨。
折角の結婚式なのに。

彼女はため息をついて、裸になると
シャワーを浴びに部屋を出た。
雨粒が彼女の少し焼けた肩を叩く。
こういう日は、半分露天のシャワールームは侘しい感じがする。
空気が冷たい分、お湯はいつもより湯気を多く漂わせて、
彼女の気分はいくらか良くなった。

爪先立ちで部屋に戻り、タオルをさっと巻いた状態で
南の町から彼女を拾いに遠回りしてくれる友達にメールを送る。

「この雨じゃあなたが大変だから、どうか無理をしないでください。
親切なあなたに平安な道を。
幸せな新しい夫婦に平安な祝福を。」

しばらくして彼から返信が来た。

「とっても残念だけど、君が後で風邪をひいたら、かわいそうだ。
私1人で行くことにするよ。ありがとう。」

彼1人で行けば2時間。彼女を迎えに行けば3時間かかってしまう。
風邪をひいてしまうのは彼の方だ。

彼女は心底、雨が嫌いになった。
体をよく乾いた清潔なタオルで拭くと、
またゆったりした柔らかい寝巻きをまとって
ベッドの上に丸くなった。

外は雨だ。
水槽の魚のように、部屋から出れやしない。
彼女はばらばらと果てない雨音に耳を澄ました。
目を閉じて、青空に舞う凧を想った。
目を開くと、凧は雨に圧されて地面に潰れた。
彼女はまた目を閉じて、
そしていつのまにかまた眠ってしまった。


次に目を開いた時には10時を過ぎていて、
雨はすっかり上がって、明るい空には凧が3つも揚がっていた。

神様も新しい夫婦を祝福しているのね。
そして私には、勉強が足りないから
遊びにいかせないように大雨を降らしたんだわ。

彼女はこの2週間ですっかりこの島の人のように、
何かにつけ神様の意思を意識するようになっていた。

彼女は遅い朝食をぱぱっと食べると、
髪をぎゅっと後ろにひっつめて出かけた。


水の女
杉森秀則(2002,japan)

予告編
by barks

この記事へのコメント
久しぶりに来ました☆更新楽しみにしてますねっ!
Posted by mokoko at 2006年07月11日 06:44
あら、行かなかったのね。
雨上がりにチャチャッと身支度を済ませ外に飛び出していく猫さんの姿が目に浮かびます。
南の島の雨って(季節によるんだろうけど)、ザーッと降ってすぐあがるから好き。
Posted by うに at 2006年07月11日 07:22
●●●うにさん
あっちじゃあんまり化粧もしなかったんですばやかったです。

ここ2,3年で乾季と雨季がはっきりしなくなってきてて、乾季なのに1日中雨が降っていたり雨季なのに何週間も雨が降らなかったりするんですって。皆、「変だよ。きっと大統領のせいだよ。」っていうんですけど
「温暖化が原因だよ。」と言ったところで説明しきらないんでやめました。
Posted by 猫 at 2006年07月11日 14:28
●●●mokokoさん
初めてだろ!その手にはのらないぜ。
Posted by 猫 at 2006年07月11日 14:57
猫さんイメージの無国籍カラーがましたよー!

時間軸がゆっくりな感じですが。どうでしょう?

あ。近々、バトンさせていただきますッ。
Posted by ありんこ at 2006年07月12日 09:41
●●●ありんこさん
中国人に間違われたことは1回、ジモティに間違われたことは2回でしたよ。ジモティ?はさすがに「うそつけ、おまえら」って言っちゃった。

時間軸、おそろしくゆっくり。。。。。
え、まだ2時だったの?気分的にはもう5時。ってことがしょっちゅう。

バトン、たのんだ!
Posted by 猫 at 2006年07月12日 11:54
こんにちは。
猫さん、現地人に間違われたんですかー???
私の彼も、サイパンで現地人と間違われてましたよ(笑)
なんか猫さんのイメージは色素が薄い感じだったんですけど。
Posted by ゆぅ at 2006年07月13日 10:59
●●●ゆぅさん
黒くはないですよ。(ね、みんな?)むしろ、「白い〜。日本人ってなんでこんな白いの〜〜〜?」って言われることの方が多いです。

「バリ人かとおもったぁー」は一種の褒め言葉らしいですよ。ある地区特有の。。。
Posted by 猫 at 2006年07月13日 11:59
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