2008年10月23日

Beep



仕事での会合が始まって、
3食きっちりホテルでサーブされるようになった。

バリエーションがいろいろあったけど、
毎日、昼か夜は決まって中華で、
その量が半端なく、辟易するほど、
大皿の料理がつぎからつぎに運ばれてくる。

おなかがいっぱいになった私は、
デザートでまた大皿に乗ってきたキャッサバのお餅なんかを
手にいっぱい持って、レストランを出た。
そして夜道をそのまま、まっすぐバーに向かう。

女の子1人で歩いていても、どうってことはない。
この辺りの治安はクタほど悪くないのだ。

バーにつくと、演奏中のニョマンに笑顔だけで挨拶しあった。
マデ君とイダ君のダブル厨房係がスタッフの定席に座って、
煙草を吸っていた。
私は同じ席に着くと、手いっぱいに持ってたお菓子をテーブルに広げ、
「さぁ、今夜はお土産があるのよ。」といった。
マデ君はにこにこしながら、
「どうしたの、これ?インドネシアのお菓子じゃん。」
「さっきレストランでいっぱい出たからもらってきたの。どうぞ。」
そういってる端からプトゥがうれしそうに焼き菓子をつまんで
一口ほおばった。
アラックコーラを持ってきてくれた、ラノムも一つつまんで、
「ありがとさん。」と言ってカウンターに戻った。
マデ君もキャッサバのお餅を食べて、なんだかやらしいかんじに
「うへへ。甘ぇ〜。」と言った。
「おいしい?」と私が聞くと、
「おいしいよ。特に美人さんがくれたもんはあめぇなぁ。」
と笑った。
この子は、本当に黙っていればジャニーズ系でかわいいのに、
しゃべるとほんとにぐだぐだねぇ。と私はため息が出た。

「ねーさん、タトゥーはしてないの?」
唐突にマデ君が尋ねてきた。
「してないわよ。ダメだもの。」
「うん。女の子はしてない方が、いいよね。やっぱ。」
マデ君はそう返した。
「マデ君はタトゥーしてるの?」
私が質問しかえすとイダ君がぷっと笑った。
「どうしたの?」私はイダ君の方を向いてきく。
「こいつのタトゥーすげぇから。」とイダ君はけらけら笑って言った。
「へぇ。みせて。」と何気なくいうと、
「えっ!?みせられないよ。恥ずかしい。」
マデ君は全力で拒否した。
「そんな恥ずかしい模様なわけ?」
私がその反応に驚きつつ笑うと、イダ君がかわりに答えた。
「違うよ、まぁ、背中中に彫ってるのもあるけど、
股にも彫ってるからさ、こいつ。」
そういって、イダ君は股間の辺りを指差した。
「へぇ。てか、なんでイダ君そんな部分のことしってるの?見たの?」
私はげらげら笑いながら、イダ君の肩を叩いた。
肉付きのいいイダ君の肩は大きくて弾力がある。
マデ君もげらげら笑い、イダ君はあせって、
「ちがうよ!水浴びしてたら、透けてて見えただけだよ!」
と言った。
「何テレてるの〜。へんなの〜。」
そんなかんじでじゃれあってると、ニョマンのライブは一旦休憩になって、
私たちの輪にニョマンも入ってきた。

「久しぶり!いつこっちきたの?」
私たちは軽いハグをして、再会を喜ぶ。
「もう先週よ!この前のライブ楽しみにしてたのに、代打でがっかりだったわ。」
「ごめんよ。実家に帰ってたんだ。弟の結婚式で。」
キャハッとニョマンはおちゃめに笑った。
「大変だったよ〜。弟が先に結婚しちまって、あんたどーすんだい!?
32にもなって、ふらふらしてばっかで!碌な仕事もしないで!って、
母親から責められてさぁ。これだから田舎はしょうがないね。」
「大変だったわねぇ。でも彼女さんはいるんでしょう?」
「う〜ん。どうだろうね。僕は彼女のこと好きだけどね。
ステディかどうかもよくわからないうちに結婚を考えてもね。」
ニョマンは私が出会ったインドネシア人のうちで、
一番考え方が西洋化しているし、誠実で非常にいい人だ。
「第一、俺まだまだいろんなところ旅行したいし、
家族持つなんてまだまだしたいことじゃないね。
髪だって、切りたくないからギターひいて稼いでるんだし。」
暢気にビンタンをあおる彼は思いっきり自由の空気がする。
バリ人でこんなに開けてて、まっすぐで、
下心のない年頃の男ってそうそういない。
私はニョマンがとっても好きだ。おちついて話ができる。

日本の流行歌の話をしている時に、
携帯が鳴った。グスからだ。

私は慌てて、席を立って電話に出る。

「今夜はブルガンディの家先で飲もう。」
グスは電話ごしでけろっとそういう。

「ブルガンディの家?なんで?」
私はレンガ敷きの舗道に出て、こそこそ声で話をした。

「金ないから。じゃ、駐車場で待ってるから。」

「え?今?」

「うん。今駐車場にいる。」

電話を切ると、私は慌てて残りのアラックを飲み干した。
「私、いかなきゃ。」

いくってどこに?
マデ君とニョマンが同時に聞いた。

「どこって。。。ちょっと。。。そこまで。」
私は困ったように笑ってみせる。
「デートか?」
男の子たちはにやにや笑って、
もっと僕らとお話ししよーよー。
ちょっとこっちきて座りなよー。
と口々に冗談っぽく言った。

会計をしていると、ラノムが聞いた。
「誰と約束してるの?グス?」
「えぇ。そうなの、今そこで待ってるっていうから。」
「どこにいくの?」
「ブルガンディのところって。」
ラノムはそっか。とうなづくとお釣りをくれ、
後ろで野次をとばしている男どもに
「約束だっていってんだから、およしよ!かわいそうでしょ。」
と、きっぱり言い放ってくれた。男たちはしゅんとした。
「ありがと。」とラノムにお礼を言う。
「みんなごめんね。また明日ね!」と定席に向かって手を振る。

気をつけてね〜。明日ね〜。
みんなの声を受けて振り返りながら、駐車場に急いだ。



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