2008年06月17日

Menghapus Jejakmu



9ヶ月ぶりに訪れた街は
いろいろ少し変わっていた。

ママとノルのお店と隣のバティックペインティングの店は、
すっかり壊されて、
新しく藁葺き屋根のおままごとみたいなお店が建ち、
ぜんぜん知らないお姉さんたちが働いている。

ノルから店の顛末はきいていて、覚悟はしていたものの、
更地をめきめきと大きな音をたてて踏みつける重機や、
テーブルの間をくるくるとよく働く
ピンクのクバヤを着たおねーさんたちの景色に
愕然としてしまった。
入り口にあった飲み物屋だけ、ぽつんと小さな小屋に
きゅうきゅうに詰まったかんじで収まっている。
意を決して、小屋に立ち寄る。
少し背が伸びたプトゥリは私のことを思い出そうと、
小難しい顔をしてじっとしていた。

あぁ、これからどこでご飯を食べろというのよ。

強い日差しの中、額を拭いながら思う。
久しぶりに帰宅したら、
家から台所と家族がいなくなってしまっていた。
そんなふうな、衝撃的な気分。
ふらふらと向かいの電話屋に行き、
ママに電話をしたら、夕方にたくさんのごはんと、
私のために作った薄手のキャミソールとスカートをもって、
部屋を訪ねてくれた。
ノルは友人の結婚式でジャワまで出かけているらしい。
あいかわらずのママのマシンガントークと、
もやしどっさりの料理がうれしかった。

隣のバティックペィンティングの店で働いていたユディは、
もっと南の方で小さなギャラリーを開いたらしい。
相変わらず、ノルに片思いをしているんだとママはけらけら笑った。
バクソ屋をしていた男の子は、地元に帰って結婚したそうだ。
みんなそれぞれの人生を歩んでる。

それから。

グスがバーをやめた。1月のことらしい。
もっと割りのいい仕事がしたいんだといっていた。
到着2日目の晩に、たまたま浜辺で儀式があって
ほんとうにたまたま、彼がバーの前を通りがかったのが幸いだった。
そうじゃなかったら、彼の携帯番号も変わってしまってるし、
っていうのは彼と話をしていて初めて知ったことなんだけど、
危うく連絡がつかず、一度も会えないところだった。

彼は完全に儀式をサボって、
一度警察に見つかってしまって注意された。
警官の背中を見送りながら、私たちは舌をぺろっと出して笑った。
風の強いビーチで、アラックをたくさん飲んだ。
店を閉めてから、ヘリポートまで散歩した。

空には、目が回るほど星が瞬いていた。波は低かった。
一番大きな星が東の空に見えた。

こんな夜に、彼はボートにもたれかかって、
私は彼にまたがって、セックスをしたんだった。
ひざの皮膚に砂の粒の跡が残った。
あれは、たった9ヶ月前のことだったか。
ずいぶん昔のことのように思える。

私の肌はもう、彼を忘れてしまっている。

キスをしても、抱きしめられても、
どんなに甘い言葉をいわれても
しみこんでこなかった。
くったりした頼りないキスや抱擁を返すばかりだった。

彼は愛してると言った。もう会えないかと思ったとも言った。

「うそばっかり。」

私は彼の言葉をさえぎるように言った。

愛してるのなら、ちゃんとおっかけてよ。何もかも捨てて。
連絡をとることすらしないのに、愛してるなんて簡単にいわないで。
妻と娘がいなかったら、君と一緒にいたいなんて、
そんなこといわれてもちっともうれしくなんかないもの。
甘くみないでよ。私はもっと価値のある女よ。

彼は私が傷ついたとでも思ったのか、
ぎゅうぎゅうに抱きしめて、あやすように髪をなでた。

結局は、門を少し入ったところで、帰ってもらった。
彼を部屋にあげる気にはならなかった。

またねと私は言ったけど、彼は何も言わなかった。
もうこの先、全く会えないかもしれない。
そう思うと残念な気もしたけど、私は引き返すことなく、
まっすぐ部屋に戻った。

あれから。

他の友達は次々噂を聞きつけては、バーにくるけれど、
グスは来ない。一度、サラスワティの夜に
バーでしばらくみんなと飲んでいたらしいけど、
私はよそにでかけてしまっていて、すれ違いになってしまった。
あれだけ毎晩浴びるように飲んでいた酒もタバコも、
ほとんどしなくなった。昨夜はついに、1滴も酒を飲まなかった。
なんだか急に、つまらなくなってしまった。

「子作り調整中だから」という
説得力のあるような、ないような理由で、
ブーイングを飛ばす友達を説得して、
早々に部屋に戻る。

朝。
首筋にうっすら残った2つのキスマークを
ファンデーションで隠しながら、
新しい携帯の番号くらい聞いておけばよかったと思う。
今更だんだん少しずつ、彼を思い出しているなんて、
ずいぶん鈍感な体になったものだ。


Peterpan


Menghapus Jejakmu
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