2008年01月04日

karisome otome



「よしっ、今夜は飲み倒そうぜ。途中で帰っちゃいやよ。」

普段は抑え気味だけど、本当はよく通る声で、
目の前の上司たちに声をかける。
3週間に渡るほぼ毎日の外部や近い同僚との飲み会ラッシュの
最後の最後に会社の忘年会はきた。
大トリだ。

ビールをいいピッチであけ、熱燗をガンガン飲み交わす。
料理が想像通りにシケていたせいで、酒に走ってしまう。
自分自身、この調子は酔っ払いそうと思いながら、止まらなかった。
自棄酒に近いところがあったのかもしれない。

一度トイレに立って、席を入り口近くの上司の隣に移す。
ドスンと座ると、くたっと上司の胸に顔を埋める。
彼のデニムシャツからはラッキーストライクのにおいがする。

「どうしたの。酔っちゃったの?」
上司は背中を優しくさすってくれる。
「人肌でも恋しくなったか?」
「それは、ないです。毎日うっとうしいほど、そばにありますから。」
そういいながら、彼の胸にくっついたまま、べったり離れなかった。

隣の同僚も同じくたずねる。
「どうしたの?もう眠たいの?」
がばっと身を起こすと、今度は彼の腕にぺったりはりついて
「そんなことないです。眠くありませんよ。もっと飲みましょ。」
そういって彼の肩にこめかみをすりつけ、右手で酒をざばっと注ぐと、
満タンのお猪口を彼の口に持っていく。
「俺はもういいよ。」
「いいってどういうことよ。おまえさん、
私のついだ酒が、のめんっちゅうことか?」
「そういうわけじゃないんだけどね。もう俺もだいぶヤバイから。」
まじまじと彼の顔を覗き込み、にまーっと笑う。
「そなの?じゃああたしが飲んだるけんねぇ。見よって。」
そういうと一息にきゅっと杯を空け、それをそのまま上司に差し出す。
「受け取ってください。部下の愛を。」
「いくらでもうけとめてやるよ。かかってこい。」
と彼はいった。私は上司のそういうところが好きだ。

ぐっと飲み干した彼の胸に再び、戻る。
「さすがです!ボス!」
二人でぎちっと堅い抱擁を交わす。

心底安心するのだ。この人たちは。大事にしてくれる。



最近ようやくわかってきたこと。
ただ、知的に刺激ある会話をするだけなんて、
成り立たないのだ、オトナの世界は。
知性もセックスアピールになってしまうんだ。
大学の外っていうのは。

それなりの格好をして、それなりのお化粧をして、
落ち着いた、相応の話し方をするだけとか、
知った風な口の聞き方をするだけとかで、
おおよその男は自分に関心を持つ。
食事に誘ってくれる。ちょっとしたプレゼントをくれる。
より仕事のしやすい環境を、待遇を、細工してくれる。
少なくとも、そういう努力をしてくれる。
そうすることで、体という見返りを求める男もいる。

島耕作の世界は女子にとってのNANA同様、
ただのサラリーマンの妄想だと思っていたが、
意外ともう少しリアルであるようだ。

人肌なんかが恋しいんじゃない。
一滴のセックスもない関係が恋しいのだ。

朝まで飲んだり歌ったりしても、
朝まで同じ毛布の中でDVDをみても、
何にも起こらない関係が恋しい。
青臭い、友情とか、アンコンディショナルな愛情とか、
そういうものは、つい最近までありふれていたのに。

一緒に食事をしただけで、
すぐにセックスがちらつくような関係なんて、
チンケだ。

関係だけじゃなくて、相手も。
なにより、自分の程度の低さを突きつけられるようで、
正直なところ、傷ついてるのかもしれない。
平気な気分でいるし、じき慣れるだろう感覚もあるけれど、
自分の意外なナイーブさに愕然とする。

なめられない女になりたい。
なんて非現実的すぎる理想か。なんていって、
ポストフェミニズム世代としては、この目標は些かしらけてしまう。
そんなのも逞しく活用できる強かな女になりたい。
こうしようか。


椎名林檎
オフィシャルサイト

カリソメ乙女
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