2007年07月09日

beetlebum



外部でのミーティングの後、
日比谷公園の脇をメトロの入口まで歩いた。
もう7月なのに、気温はちっとも高くない。

駅の階段に、ゴキブリがつぶれていて、
彼女は延々と改札を抜けてホームについてもなお、
ゴキブリと甲虫の話をし続けた。
彼はその情報の内容よりも、意外性を喜んだ。
昼間から、熱帯のゴキブリについて語るなんて、
彼の知りうる限り、彼女くらいなものだった。
彼の知るオンナノコというのは、
ゴキブリのゴの字を発するだけでも
苦々しい表情をするような感じ。

彼はそのお礼というわけでもないが、
ちょうど小学生の集団とすれちがったのをきっかけに
社会見学で国会議事堂を訪問したときに、
バスに酔ってしまって
門のど真ん中で派手に吐いた話をした。
彼女はケラケラ笑って「伝説ですね。」と言った。
彼女はこういう、
どちらかというと忘れたい過去の話(汚点)を
かなり喜んで聞く。
そして、ポジティブな感想を一言でさらりと残すのだ。
安心して汚点をさらせるタイプ。
彼は、彼女と話をするのが好きだった。

丸の内線の逆方向のホームに電車が入ってきて、
彼女の長い髪がゆるゆるとなびいた。
それを見て、その香りをかいで、
「そうやって髪をおろしてると、なんかいいね。」
彼は言った。
その、あまりにすとんとした、下心のない言い方に
彼女はかなり感心した。

「切ろうと思ってたところなのに。」
困ったように笑ってみせる。
パーマのとれかかったゆるいカールを
強めにひっぱればおへそまで届く長さだ。
もう毛先もずいぶん痛んでいるし、
手入れも面倒くさい。

「本当?どれくらい切るの?」

彼女は、ちょうど
彼くらいのベリーショートにしたいと答えて
彼は、それは、もったいないよと言った。

「髪はいくらでも伸びるのに。へんなの。」
彼女は笑いながら、
彼に「いいね」っていってもらえるのなら
もう少し、長いままでもいいかなと思った。
そういう、自分のゲンキンさが一番おかしかった。



Blur

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