2009年03月29日

落日



地下にあるエスニックな感じのバーに、
私とカルメンがするすると入っていったのは夕方のまだ5時。

久しぶりの対面は、やっぱり久しぶりなだけあって、
よく体重が増えたり減ったりするカルメンの雰囲気は、
前にあったときよりも、少しはふっくらして、
血色もいいように見えたけども、
相変わらず目の周りから疲れがこぼれている。
一番驚いたのはストレートになった髪。

すでにDJが気持ちのいい音楽を満たしてくれている空間で、
さっさとコートを脱ぎ、ドリンクを注文した。
彼女はお決まりでビールを、
私はホットチャイを。

私の大きく膨らんだお腹の中にいる人は、
空間とチャイのあたたかい温度と、
気持ちのいい音楽に反応して、
ぼこぼこ元気に動き回りはじめる。

私は仲間たちに挨拶をし、カルメンを紹介する。
カルメンがみせてくれるアフリカのダンスに、
私もみんなも興奮して興味を示す。

まさに「生命」ってかんじの躍動感。

楽器の生演奏と踊りに見入って、
ブレイクタイムの間にクスクスを食べる。
都合よく空いていた丸太のカウンターチェアに座って、
私たちは2種類のクスクスをわけっこしながら食べた。

その間、ブログについて語る。
「私さ、あのブログ、もうやめようと思ってるの。」
カルメンは、特に驚きはしなかった。
「むしろ続けられた方が驚きっていうか、心配です。」
と言った。
まったくその通りで、今の私の生活は、
ピーターがいうところの「グッドガール」そのもので、
よき妻であり、よき母であることに忙しいし、
それを楽しんでいる。

そういうわけで、
今までずっと「まばたき40回」にあった、
退廃、背徳、だらしなさ、奔放、
垂れ流しの情動とかいうものを含んだ空気感は、
もう私が出せるものではなくなってしまった。

今まで書いてきた150近いストーリーが
最初から全てフィクションだったなら、
いつまでもだらだらと書き続けていられたけれども、
私はここを続けるために、嘘の話を書くつもりはない。

ダンスのショーの第2部は、
息をするのを忘れるほどのすばらしさで、
私とカルメンは興奮しきったまま、バーを出た。

思い返せばこの場所を通じてたくさんの出会いがあった。
実際に会った人たち、今でも交流の続いている人たち、
コメントやメールだけだけど、
友達みたいな感覚でそりゃあもう、
いろんなことを話し合ってる人たち。
コメントはしなくても、定期的に見てくれていた人たちも
たくさんいただろうと思う。

ほんとにほんとにありがとう。
思わぬ大漁に振り返りながら驚いてます。

まことに突然ですが、
まばたき40回(forty-winks=うたたね)は
これでおしまい。

みなさんごきげんよう。
よい人生を!



落日


2008年11月23日

Godai Aku Lagi



ブルガンディの作業場は、
ブルガンディの完成・未完成の作品が無造作におかれている。

大きな絵画から、小さな木彫。
どれも、テーマは宗教とヌーディズムのようだ。

私とグスと、グスのお父さんと、ブルガンディの4人で、
ゆでたピーナツをつまみながら飲んだ。
グスのお父さんは、アルコールを飲まないので、
濃いバリのコーヒーを飲んでいた。

グスのお父さんが、ゆったりとしたバリ語で、
若かった頃の話をした。
グスのお父さんはインドネシア語をほとんど話さないし、
私はバリ語はほとんどわからない。
グスやブルガンディが、
時々、要点をインドネシア語で説明しないといけなかった。
まだ、バリの夜に街灯もなくて、
車もバイクもなかった時代の話。
できたばかりのバリビーチホテルで働きたかったけど、
保守的な僧侶階級のお父さんの家族は全員大反対だったこと。
ガールフレンドが5人もいたこと。

今も歳のわりには若々しく、
スリムで渋くてかっこいいおじいちゃんだから、
ガールフレンドが何人いても、おかしくないと思う。
「お父さんがもう少し若かったら、
私もガールフレンドになりたかったわ。
何曜日のガールフレンドがいいかなぁ。」
私がそういうと、お父さんはおちゃめに笑って、
グスはげらげら笑って、私の頭をくちゃくちゃに撫でた。

3本アラックを空けて、帰った。
ラッパの形をした大きな花をブルガンディがお土産にくれた。
私は、それを飛ばされないように大事にもって、
バイクの後ろで小さくなった。

ホテルの部屋はとても広くて、
中庭にあるプールの水面が白くゆらめいてみえる。

私たちはしばらくベッドでビールを飲んだ。
ほとんど服は脱いでいた。
グスは、アナルセックスがしてみたいといった。
私は最初は笑って拒んだ。
「なんでそんなのしたいわけ?汚いじゃない。」
「ポルノでやってるのみて、やってみたいと思ったから。」
この国では雑誌のプレイボーイの発刊ですら大騒ぎになったが、
実際、ポルノ動画なんて携帯でいくらでもダウンロードできる。
日本のAV女優では小澤マリアが人気で、
女の子たちですら知ってるし、
もろムスリムの素人ハメ撮り的な動画もあって、
よく男たちが一つの携帯を大勢で
覗き込んでいる風景に遭遇したら、
間違いなくポルノを見ていると判断していいくらい浸透している。

私は困った。
本気で嫌なら、当然困らないところだが、
どんなものなんだろうという好奇心も少なからずあったからだ。
散々じらしてから、
「ちょっとやってみて、
全然だめそうだったらやめるってことでどう?」
私は、好奇心をとった。

ブルガンディからもらった大きな白い花が
すでに黄色く褪せて、コップのの縁にしなれがかっている。

テレビのボリュームを少し上げた。
グスは少し酔っ払って熱くなった口を私の肌に這わせた。



Godai Aku Lagi
スーツのおにーさんたちがキュートだけど、
相変わらずアグネスのダンスの振り付けって微妙だなぁ。


2008年10月23日

Beep



仕事での会合が始まって、
3食きっちりホテルでサーブされるようになった。

バリエーションがいろいろあったけど、
毎日、昼か夜は決まって中華で、
その量が半端なく、辟易するほど、
大皿の料理がつぎからつぎに運ばれてくる。

おなかがいっぱいになった私は、
デザートでまた大皿に乗ってきたキャッサバのお餅なんかを
手にいっぱい持って、レストランを出た。
そして夜道をそのまま、まっすぐバーに向かう。

女の子1人で歩いていても、どうってことはない。
この辺りの治安はクタほど悪くないのだ。

バーにつくと、演奏中のニョマンに笑顔だけで挨拶しあった。
マデ君とイダ君のダブル厨房係がスタッフの定席に座って、
煙草を吸っていた。
私は同じ席に着くと、手いっぱいに持ってたお菓子をテーブルに広げ、
「さぁ、今夜はお土産があるのよ。」といった。
マデ君はにこにこしながら、
「どうしたの、これ?インドネシアのお菓子じゃん。」
「さっきレストランでいっぱい出たからもらってきたの。どうぞ。」
そういってる端からプトゥがうれしそうに焼き菓子をつまんで
一口ほおばった。
アラックコーラを持ってきてくれた、ラノムも一つつまんで、
「ありがとさん。」と言ってカウンターに戻った。
マデ君もキャッサバのお餅を食べて、なんだかやらしいかんじに
「うへへ。甘ぇ〜。」と言った。
「おいしい?」と私が聞くと、
「おいしいよ。特に美人さんがくれたもんはあめぇなぁ。」
と笑った。
この子は、本当に黙っていればジャニーズ系でかわいいのに、
しゃべるとほんとにぐだぐだねぇ。と私はため息が出た。

「ねーさん、タトゥーはしてないの?」
唐突にマデ君が尋ねてきた。
「してないわよ。ダメだもの。」
「うん。女の子はしてない方が、いいよね。やっぱ。」
マデ君はそう返した。
「マデ君はタトゥーしてるの?」
私が質問しかえすとイダ君がぷっと笑った。
「どうしたの?」私はイダ君の方を向いてきく。
「こいつのタトゥーすげぇから。」とイダ君はけらけら笑って言った。
「へぇ。みせて。」と何気なくいうと、
「えっ!?みせられないよ。恥ずかしい。」
マデ君は全力で拒否した。
「そんな恥ずかしい模様なわけ?」
私がその反応に驚きつつ笑うと、イダ君がかわりに答えた。
「違うよ、まぁ、背中中に彫ってるのもあるけど、
股にも彫ってるからさ、こいつ。」
そういって、イダ君は股間の辺りを指差した。
「へぇ。てか、なんでイダ君そんな部分のことしってるの?見たの?」
私はげらげら笑いながら、イダ君の肩を叩いた。
肉付きのいいイダ君の肩は大きくて弾力がある。
マデ君もげらげら笑い、イダ君はあせって、
「ちがうよ!水浴びしてたら、透けてて見えただけだよ!」
と言った。
「何テレてるの〜。へんなの〜。」
そんなかんじでじゃれあってると、ニョマンのライブは一旦休憩になって、
私たちの輪にニョマンも入ってきた。

「久しぶり!いつこっちきたの?」
私たちは軽いハグをして、再会を喜ぶ。
「もう先週よ!この前のライブ楽しみにしてたのに、代打でがっかりだったわ。」
「ごめんよ。実家に帰ってたんだ。弟の結婚式で。」
キャハッとニョマンはおちゃめに笑った。
「大変だったよ〜。弟が先に結婚しちまって、あんたどーすんだい!?
32にもなって、ふらふらしてばっかで!碌な仕事もしないで!って、
母親から責められてさぁ。これだから田舎はしょうがないね。」
「大変だったわねぇ。でも彼女さんはいるんでしょう?」
「う〜ん。どうだろうね。僕は彼女のこと好きだけどね。
ステディかどうかもよくわからないうちに結婚を考えてもね。」
ニョマンは私が出会ったインドネシア人のうちで、
一番考え方が西洋化しているし、誠実で非常にいい人だ。
「第一、俺まだまだいろんなところ旅行したいし、
家族持つなんてまだまだしたいことじゃないね。
髪だって、切りたくないからギターひいて稼いでるんだし。」
暢気にビンタンをあおる彼は思いっきり自由の空気がする。
バリ人でこんなに開けてて、まっすぐで、
下心のない年頃の男ってそうそういない。
私はニョマンがとっても好きだ。おちついて話ができる。

日本の流行歌の話をしている時に、
携帯が鳴った。グスからだ。

私は慌てて、席を立って電話に出る。

「今夜はブルガンディの家先で飲もう。」
グスは電話ごしでけろっとそういう。

「ブルガンディの家?なんで?」
私はレンガ敷きの舗道に出て、こそこそ声で話をした。

「金ないから。じゃ、駐車場で待ってるから。」

「え?今?」

「うん。今駐車場にいる。」

電話を切ると、私は慌てて残りのアラックを飲み干した。
「私、いかなきゃ。」

いくってどこに?
マデ君とニョマンが同時に聞いた。

「どこって。。。ちょっと。。。そこまで。」
私は困ったように笑ってみせる。
「デートか?」
男の子たちはにやにや笑って、
もっと僕らとお話ししよーよー。
ちょっとこっちきて座りなよー。
と口々に冗談っぽく言った。

会計をしていると、ラノムが聞いた。
「誰と約束してるの?グス?」
「えぇ。そうなの、今そこで待ってるっていうから。」
「どこにいくの?」
「ブルガンディのところって。」
ラノムはそっか。とうなづくとお釣りをくれ、
後ろで野次をとばしている男どもに
「約束だっていってんだから、およしよ!かわいそうでしょ。」
と、きっぱり言い放ってくれた。男たちはしゅんとした。
「ありがと。」とラノムにお礼を言う。
「みんなごめんね。また明日ね!」と定席に向かって手を振る。

気をつけてね〜。明日ね〜。
みんなの声を受けて振り返りながら、駐車場に急いだ。



Pussy Cat Dolls

Beep

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